台風のアフターに焼肉はちょっと

木の螺旋階段みたいなやつに生肉載せて運ばれてくる焼肉屋っていつから始まったんだろ。

 台風相当恐ろしかったけど多分3日もすれば記憶が薄れるので書き残しておきます。

 

金曜は少しだけ残業したあと、帰るところで同僚に誘われたので飲んで帰った。本当は台風に備えて多少の買い出しなりお金を下ろしとくなりしたかったけど、機会をふいにしたくなくてノコノコと行ってしまった。人間は愚か。

意外だったのは、あれだけニュースでかなりやばい台風だと喧伝されていたにも関わらず、行こうとした居酒屋に電話を掛けたら満席で断られたこと。どの口がって話だけど金曜夜とはいえ危機感ないのか。人間は愚か。

土曜は朝から母の電話で起こされた。「口を酸っぱくして」を具現化したように台風に備えるようにとアレコレ説かれた。私は口ではありがとうという念仏を唱えながらも眠気には抗えず、アーとかウーとか言いながらフェードアウトしてしまった。

終話してから、これが最後の会話だったら悔やんでも悔やみきれないという母への罪悪感を払拭するように、洗濯機を回したり、ゴミをまとめたり部屋を掃除して過ごした。起きた時点でゴミ収集がくるか自信がなかったので出すのは諦めた。万一台風絡みで中身を検められたら最悪だと思って。おかげで現在も部屋にゴミ袋がいくつもある。

洗濯機を回しながら、近所のスーパーや100均、ATMに寄った。先の震災では手持ちの現金が少なく苦慮した。急遽タクシーに乗ることもないとは言えない。

100均では乾電池やカッパ、ガムテープ、紙皿、ウエットティッシュ等を買い込んだ。養生テープは見当たらなかったが、それ以外は案外品切れしていないし有事の雰囲気があまりないことに拍子抜けした。結果から言えばここで買ったものは殆ど使うことはなかったけれど、安心材料にはなったと思う。

スーパーでは水と、特売の大根と、炊き込みご飯の素を買った。これならおかずがいらないし冷めてもおいしい。おにぎりにして避難することになったら持っていける。家にあった梅干しや韓国のりを添えて食べたら飽きなくてよかった。大根はもつ煮込みを作ろうと思って買った。呑気だった。

スーパーで買い込んでいる時点で正午ごろ。弱く雨も降っていたけど本気じゃなくて、この時点では私もまさか避難所に行くことはないと高をくくっていたので、風の音がうるさい夜を秋の夜長の延長くらいに捉えて、煮込み料理をしながら凌ごうかくらいに思っていた。結局、台風の動向が気になり避難も検討したので料理どころではなくなったのでもつ煮込みは日曜になってから仕込んだ。大変美味だった。

 

いよいよ本気でまずいのではないかと感じてきたのは17時前後かもっと前だったか。買い出しから戻ると14時ころから雨脚が強くなってきた。停電になる前にと風呂に入った。

私の個人的な恐怖のピークは18時~22時位だと思う。遅ればせながら、避難するかしないかの決断に迫られていた。

避難するにしても、どこに行くか。やはり最寄りの小学校か。でもあそこは市の災害関係のサイトを見るに、避難場所としてはやや低い土地のようで、体育館ではなく上階の教室等に避難するらしかった。

…ここで臆病風が吹いた。単身で避難所に身を置いていられるだろうか。拒否されはしないにしても。昔ながらの住宅地然としたところに建てられたアパートに住んでいるが、近所に顔見知りはいない。誰だこいつ?家族はいないのか?いい歳をした身なりのぼやっとした女が一人でこんな場所にきて、頼れる身内はいなかったのか? そんな不躾を直接言われることはないにせよ親子連れ等からの視線を想像したら、避難所に入るまでの道のりを想像できなくなり、だったら水浸しになっても自宅の方がまだマシだなと思った。

そんなこと言っている場合かと言われて当然なんだけど、外はあんなだし、テレビでは恐ろしい報道が都度アップデートされていく中で正常な判断などすでにできていなかった。アニメで背景がグニャアとしている時のような心象。こんな事なら恥を忍んで昼のうちに友人のマンションに寄せさせてもらうべきだったし花や草に生まれるべきだった。これも惨めではあるし幼児のいる家にお邪魔して友人に迷惑をかけるけど、それでも避難所と比べれば精神的に相当現実的だった。

だけどまさかここまで酷いことになるとは昼の時点ではまだ私も想像できていなかったので、一度も経験なければそのような判断はきっとできなかったんだと思う。人間は愚か。

仕方ないので没交渉になりかけていた実兄や、川向こうに最近引っ越してきた同僚、東京の友人といった自宅アパート居座り仲間とラインしたりツイッターを眺めたりして不安を紛らわせた。危機管理としては決して勧められないが、避難所に行くという選択肢を放棄してからは特に、近隣の警戒レベルや川の状況を含め「自分の選択に都合のいい情報」の方を重点的に耳で拾いながら、とっておきの肴を開封して日本酒をあおった。心配しすぎてガチガチになっていた肩もおかげで少しリラックスしたしラインも盛り上がった(?)。

酒を飲んだ話をしたらこれぞ誘い水じゃんみたいなことを友人がコメントしてきて笑った。この旧友は誘い水のエピソードを知っていたので驚いた。嘘だろ。

本気で心配してくれる系かつ手を差し伸べてもらえる距離にいる人には酒をかっくらって寝たことはリアルタイムでは伏せておいた。人間は愚か。

結局3時まで起きたもののどうにもならなそうだったので寝た。お気に入りの巨大なぬいを抱えて。窓には段ボールとか古びたラグとかを挟んだ。

途中で不安に駆られて服とかポチってしまったが、ネット回線が生きててよかった。完全に孤立して情報収集もままならず、終わる見込みが知れなかったら発狂したと思う。

あと大規模なイベントが中止になった煽りでweb再録祭りみたいになってたのがすごく有難かった。どうせなら生命の憂いのない時に楽しみたかったけど。

…そろそろ取り留めがなさすぎて目が滑るインスタみたいになってきたので推敲して削りたいんだけど なるべく細かい部分を忘れずにいたいので一旦このままにする。眠いので寝ます。

虚無ってる推しの生配信でふとした時の笑顔が最高すぎて全部許した。台風を乗り越えたごほうびに写真集ポチった。